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 研究インタビュー

「医薬品の安心安全を確保する情報技術」

(話:堀里子准教授、聞き手:中尾彰宏准教授)

 

 

中尾:今日は、医薬品情報の研究について、堀先生にお聞きしたいと思います。

 

◆薬物療法の個別化(テーラーメードの薬物療法)


中尾:堀先生の研究テーマはどのような内容ですか?

堀:私の研究テーマは、医薬品を正しく安全に使うためのシステムの構築です。

中尾:具体的にはどのようなシステムになりますか?

堀:ひとつには、処方設計支援システムの構築が挙げられます。薬物療法の個別化を実現するためには、基礎研究で得られた情報を医療現場において最適な形で適用する必要があります。私たちの研究室では、主に薬物動態学(Pharmacokinetics)(くすりが体内のどこにどのような時間経過でどの程度の量で行きわたるかを知るための学問)の理論を応用し、患者個人個人が最小の副作用の中で最大の治療効果を得るための「テーラーメード処方設計支援システム」の開発を進めています。

中尾:「テーラーメード処方設計支援システム」・・ですか?

堀:例えば、腎障害時の投与設計の最適化、代謝阻害に基づく薬物相互作用を防ぐための投与設計の最適化、飲食物や健康食品、嗜好品との相互作用を回避するための投与設計の最適化、遺伝子多型を有する患者に対する投与設計の最適化などのためのモデル解析、コンピュータアルゴリズム・データベースの設計、そのプロトタイプの構築などが挙げられます。

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堀 准教授

 

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薬の体内動態・作用を記述するモデル

 



◆医療現場で起こっている医薬品の諸問題をリアルタイムに捉える

堀:しかし、医療の現場では、こうした最先端の薬物治療などどこかへふっとんでしまうような薬物治療の失敗、投薬ミス、ヒヤリハットといった問題が毎日のように生じているのも事実です。

中尾:このような問題にはどう取り組めばよいのでしょうか?

堀:まずは、医療現場でどのような問題が起こっているのかを積極的に捉え、解析していくことが第一歩だと考えています。私は、薬学系研究科の澤田康文教授と一緒に臨床現場で起きたインシデント・アクシデント事例を収集し、医学・薬学的観点から解析を加え、医療現場にフィードバックすることで、臨床事例を研修の観点から共有するインターネット基盤の薬剤師間情報交換・研修システム(登録薬剤師:12,000 名)を 2001 年から運用しています。さらに、2005 年からは同様の全国医師間情報交換・研修システム(登録医師:6,000 名)も運用しています。

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薬剤師間・医師間情報交換・研修システム


中尾:医療現場で起こった様々なトラブルを医療従事者から掘り起こしてくるシステムですね。

堀:その通りです。このシステムは、市販後の医薬品の諸問題やニーズを医療現場から掘り起こすシステムとしても効果を発揮しており、新たなエビデンスをいち早くとらえ、育薬・創薬研究への橋渡しをする役割も果たしています。



 

◆ミス・ヒヤリハット事例に学ぶ!薬物治療インシデント・アクシデント事例ライブラリーの構築


堀:現在、私たちは蓄積された臨床事例を分類、整理した薬物治療インシデント・アクシデント事例ライブラリーの構築を進めています。そこに収載した事例から、トラブル事例の共通点やパターン、法則性を見いだしたいと考えています。将来的には、このライブラリーを活用することで、今後起こるかも知れないトラブルを予測し、医薬品の不適正使用や投薬ミスを未然に回避することもできるでしょう。さらに、このライブラリーには、医薬品を医療従事者・患者の双方にとって使いやすくミスを招き難い製品へと進化させるためのノウハウもたくさん詰まっています。

 

 

 

 

◆ユビキタスコンピューティングを活用した医薬品の安心・安全


堀:薬物治療上問題が生じた事例を解析していくと薬学的知識のみでは解決できない問題が山積していることが分かってきます。例えば、医療従事者のヒューマンエラーによる薬の不適正使用、投薬ミス、または患者による薬の誤用、薬に対する誤解・不信など…です。

中尾:なかには、情報技術で解決できることもたくさんありそうですね。

堀:はい。投薬ミスや薬の飲み間違い、飲み合わせの問題は、医薬品に電子タグをつけて管理したり、患者情報とのチェックを可能にすることで、解決に向け大きく前進するでしょう。現在、データベースを提供する私たちとシステムを構築する坂村研究室との共同研究プロジェクトとして取り組んでいるところです。

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ユビキタスコンピューティングを活用した
薬と食の安心・安全

 

 

 

◆おわりに

中尾:研究室のメンバー構成は?

堀:研究室は、学際情報学府と薬学系研究科(澤田康文教授が主宰)の大学院生で構成されています。現在は、博士課程が 2 名、修士課程が 4 名が在籍しています(うち女性が 2 名)。このほか、薬学部 4 年生、研究員や研究生として製薬企業などの研究員や医療現場で働く薬剤師の方が一緒に研究を行っています。スタッフは澤田教授、私を含め 4 名です。

中尾:最後にひとことありますか?

堀:研究室では、市販後の医薬品の適正使用と育薬(薬を正しく使って上手に育てる)を目指して研究を行っています。市販後の医薬品の諸問題を取り扱っていくためには、薬学の基盤となっている基礎科学領域にとどまらず、多くの関連学問領域とのインタラクションが重要となってきます。学環の中で、自身の専門性を深めながら、新たなアプローチ・アイディアで薬の安心安全のための研究に取り組みたいという意欲のある方を歓迎します。

中尾:どうもありがとうございました。

リンク: 医薬品情報学講座ホームページ

 

 

 
   
 
   
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