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 研究インタビュー

「ユビキタスコンピューティングで作る社会基盤」

(話:越塚登教授、聞き手:中尾彰宏准教授)

 

 

中尾「まずはありきたりな質問ですが、越塚先生の研究室では、どういう研究をしていますか?」

越塚「はい、私のところは、領域としてはコンピュータサイエンス分野で、守備範囲は比較的広いのですが、ひとことでいうと『ユビキタスコンピューティング』、取り組んでいる分野としては、『組込システム』、『オペレーティングシステム』、『コンピューターネットワーク』、『ユーザインタフェース』などがあります。なんでこんなにいろんなことをと思うかもしれませんが、共通するテーマは、コンピュータをどうやって作るか?大きなコンピュータ小さなコンピュータいろいろありますが、私は、小さいコンピューターに興味があります。」

中尾「小さいコンピュータを作ることに注目すると、どうしてそういうテーマが出てくるのですか?」


越塚教授

越塚「ユビキタスは、まさに小さいコンピュータを身の回りに埋め込んで、どんなことができるかといった研究ですよね。組込システムはそういう小さいコンピュータの構成方法の研究です。小さいコンピュータっていうのは、当然単体では小さいので、機能がすくないです。従って、他のコンピュータと通信して協調動作をすることが不可欠ですから、当然コンピュータネットワークの技術は不可欠になります。ある意味で、小さいコンピュータは、単細胞なコミュニケーションマシンといえるかもしれませんね。それで、そんな小さいコンピュータを人間はどうやって使ったらよいかを考えると、当然ユーザインタフェースが重要になります。OSはコンピュータを作るうえでは、最も基盤になるパーツだと思ってますので、これは何をやるにしても落とせないテーマです。」

 

中尾「具体的には、どういう応用やアプリケーションがあるんですか?」

越塚「例えば、食品トレーサビリティといって、食べ物に電子タグをつけて、食品の安全性に関する履歴情報を集めるようなことをおこなったり、場所情報システムといって、私たちの身の回りの場所に取り付けれた電子タグやビーコンから得た情報から、今自分のいる位置を把握して、その場所の情報を表示するとか、そういったものが代表例です。今、ユビキタスIDというプロジェクトをやっていて、世の中のすべてのモノや場所にucode(ユーコード)というIDをとりつけて、様々な情報サービスに活用しようとしています。組込システムの方は、T-Engine/T-Kernelという、共通プラットフォームの研究をしています。また、ユビキタス環境のセキュリティーとしてeTRONというプラットフォームを研究していて、新しい機能をもったスマートカードを設計して開発したりもしています。」

 


食品に取り付けたRFIDから
情報を取り出す

薬品に取り付けたRFIDから
情報を取り出す

東京銀座で場所に応じた
情報提供を行うシステム
(東京ユビキタス計画銀座)

中尾「研究室では、どんな感じで研究をしているんですか?」

越塚「研究室は、坂村・越塚研究室として、坂村先生と一緒に研究室を運営しています。坂村先生が指導教員をしている院生も、私が指導教員をしている院生も、分け隔てなく、どちらも指導します。また、研究室が中心になって進めている研究プロジェクトの特任教員や助教などが共同で研究を進めていますので、研究テーマに応じていろんな先生方と一緒に仕事をします。うちは、下克上ありですから(笑)、学生でもどんどん研究していけば、先生方をさし置いてでも、大きな研究プロジェクトに取り組んでいくことも可能です。」

中尾「なるほど」

越塚「研究は、できるだけ国際的に世界で活躍することを常日頃心がけてます。IEEEやACMなどが開催する国際学会に論文を投稿して、審査を通過すれば、どんどん海外に出かけていって発表してきます。それだけでなく、研究は産業界や政府とも一緒に共同で進めています。我々は、研究成果が論文になって学術的成果となることだけでは満足しません。それが、産業界や政府を通して、実際に世の中に普及して使われるようになるところまでを目指します。現在、日本だけでなく、世界各地の400以上の会社や政府組織、大学や研究所と共同プロジェクトをおこなっています。これは学生の人にやってもらってはいませんが、研究成果をISO/IECやITUの国際標準にするという仕事にも力をいれています。」

中尾「研究室の学生はどのくらいいます?」

越塚「私と坂村先生とが指導する学生で、全部で20名程度の比較的大規模な研究室になっています。最近は、留学生も3名いて、国際色も豊かです。社会人学生で働きながら一緒に勉強している人たちもいて、まさに、いろいろな人がいる多様な研究室です。」

中尾「坂村・越塚研を志望する学生には、どういうことを希望しますか?」

越塚「そうですね。まずは、コンピュータが好きということでしょうかね。やっぱり今の時代は、コンピュータは動いてナンボですから、自分のアイデアを実際にコンピュータ上で実現して、それを動かすことに情熱を注ぐことのできるマインドが欲しいですね。それさえあれば、あとは、計算機科学や電気電子工学の基本知識を習得していてもらえれば十分です。」

中尾「学際という点はどうですか?」

越塚「計算機自体が、総合的な工学・科学ですので、それ自体が学際だともいえます。それと、何か実世界における具体的な問題を解こうと思ったら、それも学際、それもかなりpracticalな学際。なぜかといえば、何か問題を解こうと思ったら、そのための手法は当然いろんな分野の知見が必要ですから。問題は、それを一人で全部やることはできない。なので、自分はやはり自分の専門領域を世界的に高いレベルで極めることがまずは重要です。その上で、他の領域の人と協調して、共同で大きな問題に取り組むことができる。それが学際なんじゃないかと思います。そういったことで、修士論文のときは、テーマ自体は、ある程度伝統的なコンピュータサイエンスの手法に則って研究してもらっています。」

中尾「どうもありがとうございました。」


坂村・越塚研究室の集合写真

 


   
       
   
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