越塚:「オーバーレイネットワーク・ネットワーク仮想化という技術はどういうものでしょうか?」
中尾:「近年,サーバの仮想化技術が流行ですが,ネットワーク自体を仮想化して,仮想ネットワークを自由に構築する技術です.現在のインターネット上に,仮想ネットワークを構築できるため,世の中の人々に使ってもらえるアイデアを世界規模で試してみることが可能になるという,非常にスケールの大きい話です.私はPrinceton大学にいたころにPlanetLabというプロジェクトを共同で立ち上げ,世界規模のオーバーレイネットワーク環境を構築,そして,その上で,新しいネットワークのあるべき姿を実証実験してきました.少し,専門的な話をすると,オーバーレイネットワークは,ネットワークのエッジ(端点)にあるサーバ群を仮想化して,ネットワークで接続する技術ですが,最近,ネットワークのコアにあるルータを仮想化するという,ネットワーク仮想化のプロジェクトを新しくはじめました.OSやネットワークの知識を統合する面白い研究ですが,まだ新しい分野であり,今後の発展が非常に期待される研究分野です.私の研究室は,日本ではNICT,USでは,PrincetonやStanford大学,そして,EuropeではFIREを中心とした組織(UPMC, INRIA)などと深く連携してプロジェクトを進めています.」

ネットワーク仮想化
越塚:「オーバーレイネットワーク,ネットワーク仮想化技術を用いてどのような新しいことができるのでしょうか?一般の人にわかりやすい恩恵というのはどのようなことでしょうか?」
中尾:「インターネットのアーキテクチャを根本から考えることができますので,様々な恩恵を生み出す仕組みを実現することができます.私の研究室でやっている,オーバーレイ・仮想化の研究は大きく分けて2つの柱があり,(1)オーバーレイ・ネットワーク仮想化の基盤をどう作るかというインフラストラクチャーの研究(これは実証実験のためのテストベッドの設計も含みます),そして(2)その基盤を使ってどのような新しいネットワークが構築できるかというアプリケーションの研究があります.前者は,PlanetLabや日本独自で構築しているCoreLab,それから仮想化ルータプロジェクトなどがありますが,ご質問の意図は,後者ですね.アプリケーションという意味では,現在では,「効率の良いネットワーク」と「堅牢性の高いネットワーク」を実現するためには,どのような仕組みが必要か,ということについて研究しています.」
越塚:「効率の良いネットワークや堅牢性の高いネットワークとは何か,もっと具体的な研究テーマについて教えていただけますか?」
中尾:「はい,後者の例で具体的に言うと,学生の研究のテーマは,経路制御(仮想ネットワークを用いてインターネットの経路可用性を向上する研究,マルチパス経路制御など),DDoS攻撃防御(仮想ネットワーク・クラウドコンピューティングを用いたDDoS攻撃防御),P2Pトラフィック制御(ISPにおけるP2Pネットワークトラフィックの軽減,ネットワークコーディングを用いたトラフィック削減,Poisoningを用いたトラフィック制御),クラウドコンピューティング(クラウドコンピューティングのためのトラフィック制御)などが挙げられます.研究分野はこれだけに閉じているわけではなく,経路制御,ネットワークセキュリティ,分散ネットワークアプリケーション,クラウドコンピューティング,仮想化技術など広い研究分野をカバーしています.」
越塚:「日本では総務省・NICTを中心とした新世代ネットワークの研究がスタートしましたが,先生の研究室では新世代のネットワークの研究に大きく関わっていらっしゃっているのでしょうか?」
中尾:「はい.私の研究室では,主にNICTと共同で,ネットワーク仮想化の方面から新世代ネットワーク研究に参加しています.また,AKARIと呼ばれる研究活動でも中心的に活動しています.先程申し上げましたが,オーバーレイネットワークやネットワーク仮想化という技術は,新しいネットワークを,もう一度,一から考えてみようという研究方針を実現する手法です.また,絶えず進化するネットワークアーキテクチャを実現する意味でも大変重要な研究になります.その意味では新世代ネットワーク研究の中でも重要な位置を占めると考えています.」
越塚:「研究室にはどのような院生がおられますか?」」
中尾:「現在は,博士課程が2人,修士課程が4人,そして研究生が2人在籍しています.来年度の修士課程の学生には,夏の入試で2人が内定していますが,冬の入試でも博士課程,修士課程共に,更に募集をしています.学生の半数が外国人留学生という国際色豊かな研究室です.女子学生は2人います.」
越塚:「受験する学生にはどのようなことを期待していますか? 」
中尾:「折角大学院で研究するのですから,新しいものを創造したいという,精神的に若い,”やる気”のある学生を期待しています.コンピュータ科学の勉強をして来た,OSやネットワークの知識を持った学生,プログラミングが得意な学生,ものづくりが好きな学生は大歓迎です.また,私の研究室では,留学生も多く,また,私の知り合いも国外に多くいますので,国外の研究者と共同で研究することが多く,グローバルな視野で活躍したいという意気込みのある学生にとってはとても良い環境だと思います.例えば,PlanetLabやCoreLabを使えば,創り上げたものを,世界規模あるいは日本全体で実証実験をすることが可能です.」
越塚:「先生の研究室は,国際色が豊かと聞いていますが,英語の能力はどの程度必要でしょうか? 」
中尾:「私の研究室内だけというわけではなく,これからの世の中は,英語はグローバルに生きていくためには必須です.本研究室では,打ち合わせは日本語と英語の両方で行います.英語にあまり自信がなかったとしても研究室内で鍛えられることと思います.プログラミング言語と同様,ツールとして英語は最低限は必要と考えています.ただし,英語だけが堪能であっても困りますので,専門知識と英語,バランス良く兼ね備えていることが重要です.もちろん,研究室に入ってからは英語で論文を書いたりすることを通して,両方の能力を磨く機会はたくさんあります.」
越塚:「英語で論文を書く機会は多いのでしょうか? 」
中尾:「私の研究室では,基本的に,英語の論文の執筆を第一に考えています.日本の学会であっても英語で提出出来る場合はそうします.英語を話す人口と日本語を話す人口を比べれば,自分のアイデアを発表するのにどちらが効率がいいかは一目瞭然でしょう.英語が苦手な人には苦労はありますがその苦労の甲斐は必ずあります.学生にはIEEEやACMなどの学会に投稿することを奨励しています.」
越塚:「最後にひとことありますか?」
中尾:「総合分析コースは情報学環の中でも比較的新しいコースで,私の研究室もまだスタートしてから間もない研究室です.理系色がかなり強く,しかし,従来の枠にとらわれず非常にオープンに研究をすすめられる良いところがありますので,是非,意欲のある学生と共に研究したいと思っています.一度見学に来るとわかると思いますが,研究室はかなりアットホームな雰囲気で,仲良く研究しています.」
越塚:「ありがとうございました」
リンク:
- http://nakao.iii.u-tokyo.ac.jp
- http://nakao-lab.org/cgi-bin/moin.cgi/

中尾研究室メンバー集合写真
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