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 研究インタビュー

「情報通信技術で災害から人の命と暮らしを守る」

  (話:鷹野澄教授、聞き手:中尾彰宏准教授)

 

   
   

 

中尾「先生の研究室では、どういう研究をしていますか?」

 

鷹野「私の研究室では、情報通信技術(ICT)を利用して、大きな災害から人の命と暮らしを守るための研究を進めています。これまでは、地震時の建物の揺れを診断するIT強震計の開発、建物の健康診断(ヘルスモニタリング)技術の開発、強い揺れの前に警報を出す地震警報システムの研究などを行ってきました。今後もこれを発展させるとともに、さらに、現在私が所属する総合防災情報研究センター、長いのでCIDIRと呼んでいますが、このCIDIRでは、理学、工学、社会学の研究者と協働で、新しい防災情報研究に取り組んでいますので、今後は、地震火山以外についても対象を広げて研究したいと考えています。」

 

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鷹野教授

   
   

 

 

中尾「CIDIRとは、どのようなところですか?」

 

cidir鷹野「CIDIRは、20084月に設立されてまだ間もないセンターです。このセンターを一言で言うならば、「情報」を核に「減災」を目指す研究センターです。日本列島は地震活動や火山活動が活発であり、また急速な地球温暖化で巨大台風や豪雨災害などが頻繁に襲うなど、世界的にみても大規模自然災害に見舞われやすい地域です。その狭い地域に、世界の人口の約1/50GDPの約1/10もの密度の高い社会経済活動が営まれています。ここをひとたび大災害が襲うと、人的経済的被害の影響はその地域にとどまらず我が国全体に及ぶこともあるでしょう。このような大災害から、私たちの命や暮らし(社会)を守るには、災害の事前の予測と対策、いざという時の避難行動、被災後の復旧・復興の対策などにおいて、「情報」のもつ役割が大変重要になります。CIDIRでは、これまで独立に防災に関わってきた社会情報学、地震火山学、防災工学などの研究者の力を集結して、災害軽減に向けて協働して総合的に取り組む予定です。」

 

中尾「先生の研究されているIT強震計について教えてください」

 

鷹野「IT強震計は、身近な場所や建物が地震時にどのように揺れるのかを、利用者自身が調べることができる道具がほしいと思って開発したものです。我が国は、世界に類をみないほどの高密度に地震計が設置されていますが、それでも高々一つの区市町村に13台程度にすぎません。これらの地震観測ネットワークは、国や自治体などの公的資金によるセンサーネットワークで、その利用も気象庁や研究者向けとなっています。もちろんこれらは大事ですが、一方で、私たちの身近な場所の地盤や建物などが地震時にどのように揺れるのか、自宅や学校、職場の建物が大地震で倒壊することがないのか?ということに対しては、公的ネットワークは何も教えてくれません。」

 

fig2

建物用IT強震計システム

 

 

鷹野「大地震による災害を軽減するには、地震で「もの」が壊れないようにしておくことが大事です。しかし多くの人は、「自分の家は大丈夫」と思っているだけです。もし建物の健康診断が簡単にできて、どこが壊れ安いか、あるいは、どこが損傷しているかなどを示すことができれば、多くの場合その対策を実施することが容易になります。IT強震計は、このような建物の健康診断のための「聴診器」となることを目指しています。具体的には、建物の中に多数のセンサーを設置して、日頃の弱い地震時の揺れを観測します。IT強震計のセンサーは感度が高く、人が感じない程度の弱い揺れでも取れますので、長期間観測すれば多数のデータが取れます。そうして得られたデータから、建物の地震時の揺れをアニメーションで再現して可視化し、実際の揺れの異常を調べたり、詳細なデータ解析をして、どこか弱いところがないかとか、どこが損傷していないか、などを診断しようという訳です。 fig4

なお、IT強震計でこれまで取られた記録は、ホームページでも見ることができます(IT強震計:http://wwweic.eri.u-tokyo.ac.jp/ITKyoshin/)」

 

fig3

IT強震計の記録と緊急地震速報到達時間の関係

 

鷹野「このほかに、IT強震計は、強い揺れを直前に伝える「オンサイト地震警報装置」としての利用も可能です。地震はP波の後にS波が来ますが、強い揺れはS波とともにやってきますので、弱い揺れのP波を検出して警報を出す訳です。このような強い揺れを早期検知して警報を出す技術は、現在気象庁が緊急地震速報として実用化していますが、近い地震の場合はIT強震計のオンサイト警報装置の方が早く警報を出せます。ネットワークを利用して、これを集めれば、より早く警報を出すことも可能です。気象庁の情報と組み合わせることも可能です。このように、まだまだ技術的には開発途上で、取り組むべき課題が残されています。」

 

中尾「大学院生の研究テーマとしてはどのようなものがありますか?」

 

鷹野「大学院生の研究テーマとしては、いくつかレパートリーを用意していますが、基本は、本人の希望や適性も考慮してふさわしいテーマを決めていきます。具体的なテーマとしては、

  1. 1.    IT強震計を用いた、建物や構造物の健康診断(ヘルスモニタリング)手法の研究。
  2. 2.    IT強震計を用いて日頃の地震時の建物の揺れを可視化し診断する技術の研究。
  3. 3.    IT強震計を用いて強い揺れの前に警報を出す地震警報システムの研究。
  4. 4.    気象庁の緊急地震速報など地震警報情報の情報伝達の仕組みと活用に関する技術。
  5. 5.    地域の要援護者などを対象とした草の根型地震防災情報システムの研究

などがあります。」

 

中尾「研究室では、どんな感じで研究をしているんですか?」

 

鷹野「まだ4月に情報学環に異動したばかりなので、情報学環の大学院生はいませんが、兼担している理学系研究科と新領域創成科学研究科の大学院生(修士)が現在3名います。大学院生は、地震研究所の大学院生と一緒の部屋で、地震研究所の他の大学院生や研究員、教員の方とも一緒に交流し研究協力を行うことができます。また、私が中心となって進めている、IT強震計研究会に参加して活躍していただければ、他の大学や企業の方々とも交流することが可能です。」

 

中尾「志望する学生には、どういうことを希望しますか?」

 

鷹野「そうですね。防災や地震学の知識は研究室に入ってからでも学習できるので、まず第1に、防災や地震などに興味があり、第2にコンピュータが好きあるいはコンピュータには自信があるという方が向いていると思います。ただ、先ほど述べたように、本人の希望や適性を考慮して研究テーマを考えていきますので、まずは、研究室訪問をしてみていただくことをお勧めします。」

 

中尾「どうもありがとうございました。」

 

   
       
   
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